「遅い」


私は駅前に着いて早々、女の子の名前みたいな名字の人に不機嫌そうに睨みつけられてしまった。

私がここに着いたのが、待ち合わせ時刻から10分程オーバーしてしまったから、だと思う。


「ごめん」


と謝りつつも、内心ムカッとしていた。



そりゃ、遅刻しちゃったのは悪いと思うけど。

なんで、そんなに睨まれなきゃいけないの!
無理矢理約束とりつけといて、よくそんな態度でいられるよね!?



「さ、行くよ」


強引男、すなわち綾香は私の腕を掴んでさっさと歩きだしてしまった。


もうその声に不機嫌は感じられない。

代わりに、反比例するみたいに私のイライラは募っていくんだけれど。


ていうか、腕を掴むってどーゆーこと!


「もう、離してっ」


私は腕を掴んでいる綾香の手を思いっきりふりほどき、ツンとそっぽを向いた。


綾香はそんな私を見て、くすりと笑って一言。


「木原はつれないね」


「………」


私が彼に向けた白い目も気にしない風で、今度は自然に私の手をとって歩き始めた。