「…だからって、本当に買ってこなくていいんですってば」
食後に出したコーヒーの香りが部屋の中をふわふわ漂っている。
帰ってきた夕月さんがテーブルの上に置いたものは、私が“頼んだ”柚子胡椒だった。
律儀に買ってきた夕月さんは、テーブルを挟んで私の前に座り、きょとんとしている。
「ビィが買ってこいって言ったじゃん」
「ちが…あれは…あれですよ!」
「確かに言ったよ?柚子胡椒って」
「言ってない。言ったけど言ってない」
夕月さんって言いそうになったのごまかすために柚子胡椒って言ったの、わかってなかったの!?
夕月さんはええ?と眉を下げている。
「わざわざお兄ちゃんとか言ってくるから、よっぽど欲しかったのかと……」
夕月さん、バカですか!?
大体、莉沙の前ではお兄ちゃんと呼べと言ったのはあなたです!
「…まぁいいですよ。あって困るものじゃないし。一応、ありがとうございます」
私がぺこりと頭を下げると、夕月さんはうんうんと頷いた。
「最初っからそう言えばいいのに、ビィは素直じゃないんだから」
「………」
(なんかもう、いいや)



