ある日、珍しく学校に行くと担任に即行で生徒指導室に拉致られた。



ずんぐりむっくりしたハゲた中年親父だけど、妙に熱苦しい先生で、俺は3年間、なぜかこいつにばかり担任がぶち当たっていた。



何でも俺のクラスには1年留年した奴がいて、そいつのために4年間も担任を継続している途中らしい。



最後(卒業)まで面倒見るつもりで。



そんな熱苦しい担任は、ひょっとしたら俺に留年したそいつの影を重ねていたのかもしれない。



しょっちゅう家庭訪問に来るわ、夜中に街をぶらついていたら『偶然だな』といいながら頻繁にバッタリ出くわして、そのたびにラーメンおごってもらってウチに強制送還される。



こいつ俺のストーカーかよ、って毎回思ってたけど悪い気はしなかった。





『西崎、おまえ高校卒業したら進路はどーするんだ?』



タヌキみたいなぽっこりお腹を突き出して、ソファーにもたれながら担任が訊いてくる。



生徒指導室に連れてきた理由はそれか。



『なぁ先生、俺卒業できんの?』



『できんの?じゃなくてするんだよ。不可能を可能にするから人生面白いんだろ』



『不可能を可能に…』