慧吾≫≫≫見たくない





『…じゃあ西崎さんの心に今ある人は、…誰ですか――?』





俺の心に今ある人…



すれ違っていく車のヘッドライトが車内を明るく照らす。



真剣な表情の福嶋を見て、真面目な答えも生半可な答えもおざなりな答えも出せないと思った。



俺の心に今あるのは――…



自分自身、誰なのか分からなかったからだ。



まるで曇りガラスの向こうにいるように思い浮かんだ人物が不透明で誰なのか判別がつかない。



花が咲いたように笑っている気もするけど、優しい声で俺を呼んでいるような気もするけど、正直自分でもどっちなのか分からない。





――…村瀬なのか優花なのか。





優花はたしかに好きだったけど、優花に対する想いはまぎれもなく恋なんだって信じていたけど、だけどだんだんその想いは心と体が成長していくにつれ薄くなっていった。