慧吾≫≫≫決定的証拠





時計の秒針の音だけが響いている。



遮光カーテンのせいで室内は薄暗いが外はもうだいぶ明るいのだろう。



カーテンの隙間から洩れた一筋の光に反射して宙を舞う埃がキラキラ舞っていた。



カーテンを開け、ベランダに出てみた。



夜遅くに降り出した雨はすっかり上がっていて空には気持ちのいい青空が広がっている。



あれから村瀬に何度も電話を入れているが一向につながらない。



病院にいるから電源を切っているのか、それとも何か帰れない事情でもできたのか?



それなら連絡ひとつ寄越せばいいのに、もうすぐ8時だというのに村瀬からの電話は1本もない。






福嶋を知り合いだと嘘ついて、夜中にもかかわらず病院へと駆けつけた村瀬。



そもそも本当に病院に行ったのか?



福嶋の部屋に行ったんじゃないのか?



たとえ怪我の話が本当でも、なぜただの同僚にそこまでする?



心配で居ても立ってもいられないほど本当は村瀬は福嶋のことが好きなんじゃないのか?





『すぐ帰ってきますから――』





村瀬が出て行った直後の、ドアの閉まった音が今も耳にこびりついて離れない。





すぐ帰るって言ったのに、





なのになぜ帰って来ない――?