涙に濡れた唇は村瀬の顔のあらゆるところに口づける。



額に口づけ、



鼻先に口づけ、



顎に口づけ、



頬に口づけ、



こめかみに口づけ、



最後に…



唇に親指を押し当て、その上に口づける。



長く…想いを込めて――…。






「西崎さんなんかやめて……俺にしろよ」






熱い吐息まじりに耳元でささやく。



耳たぶにキスして軽く吸い上げた。



わざとさせたリップ音に反応して今度はくすぐったそうに寝返りを打つ。



仰向けになった村瀬の肩に顔を埋めて首と鎖骨に指と唇を這わせた。



キャミソールの肩紐をずらし、腰に向かって少しずつ盛り上がっていく女特有の部分にそっと手を触れる。



あまりの柔らかさに、あまりの優しい温度に、たまらず唇を寄せた。



際どいラインまでやさしく唇を這わせる。



その時ふと、ふわりと鼻孔をくすぐったシャンプーの匂い。





――…西崎さんの匂い。





消したくても消せない匂いに焦燥感がつのる。



気が狂いそうになる。





「…何で」





――…何で体から西崎さんの匂いなんかさせてんだよ。



――…何で西崎さんの部屋になんか泊まりに行くんだよ。



――…何で……何で西崎さんなんだよ…!





ぶつけどころのない怒りの矛先を村瀬のむきだしの肩に向けた。



首の付け根をきつく吸い上げ、雪のように白い肌に、小さく紅い花を散らした。





もう見えない場所に所有権を主張したりしない。










――村瀬は絶対に、西崎さんには渡さない。












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