隼人≫≫≫帰したくない





「痛゙っ…!」



何の前触れもなく突然襲った堪え難い痛みに思わず右を向くと、村瀬が俺の肩に寄りかかって眠っていた。



「…ったく」



そっと腕を引き抜いてかわりに胸に抱き寄せようと思ったら、そういえば手を繋いでいたことに気がついた。



俺の膝の上で固く繋がれている2人の手。



なぜか俺に触られても緊張しない、逆に安心するって言っていた村瀬。





――どこまでも勘違いさせるようなことしやがって。





無意識の小悪魔とかマジでタチが悪い。



だけど…



それって素直に喜んでいいんだよな?



俺だけ特別って思っていいんだよな?



それこそが俺が唯一、西崎さんに勝てる武器なんだよな?






村瀬に触れられない西崎さんより、

村瀬に触れられる俺のほうが、

たとえ想われていなくても、

――幸せなんだよな?