綾乃≫≫≫安心する人





「――送ってく」



病院の前でタクシーに乗り込んだあたしたち。



「おまえん家、楠台だったよな。すみません。運転手さん、楠台まで…「あっ!」



「何だよ」



「あたし今ウチに帰れないの」



「ああ…そういや西崎さん家に泊めてもらってるって言ってたよな? 
一昨日は俺ん家で昨日は西崎さん家かよ。
おまえも清純ぶって実はお盛んだな」



「なっ…違うもん! 話を聞いてよ!」



「ああ聞いてやるよ、いくらでも。
西崎さんみたいな草食系がどんな手順ふんでフィニッシュまで持ってくのか大いに興味あるしな」



「何の話よ!」



西崎さんの名前が出てきたらとたんに機嫌が悪くなった福嶋くんに、あたしはびくびくしながら昨日の出来事をかいつまんで話した。





「…ストーカー?」



「そう…だからウチに帰るのは危険だからって西崎さんが…」



「おまえ何でそれ俺に言わないわけ? 昨日電話かかってきたときその場にいただろ俺」



「だって…」



「だってもクソもあるか」



「だって…また福嶋くんに迷惑かかっちゃうもん」