――ドンドンドン!!



「福嶋くん! 福嶋くん開けて!!」



暗がりで鍵穴が見えにくいから内側から開けてもらおうと思ったんだけど、雨音でドアを叩く音が聞こえないのか、もしくは事務所にいないのか、福嶋くんはなかなかドアを開けてくれない。



こんな時間だもん、正面入口じゃなくて裏口のドアを叩かれたらいくら男の人といえ怖いよね。



明らかにお客さんじゃないし、不審者か何かかと思われてるのかも;



――ドンドンドン!!



「福嶋くん! 福嶋くん!!」





・・・・・・シーン・・・





あ〜もうっ…



まさかトイレにでもこもってるの!? 下痢!?



痺れをきらして横殴りの雨を猛烈に浴びながら仕方なしに鍵穴を探す。



電話をするのもまどろっこしいし今から正面入口に向かうのも面倒なので感覚を頼りに鍵穴に何とか鍵をつきさした。



すると――…



ガチャ…



こちらから開ける前に内側からドアが開かれた。





「…ぅわっ!?」



ドアを開けビビったように一歩後退りしたあと、訝るように前のめりであたしの顔を確認する福嶋くん。



「……む…村瀬? は? おまえ何やってんだよ、びしょ濡れで。…貞子かと思ったぞ」



「貞子っ!?」



雨で顔に髪が張り付いていたらしく、それで福嶋くんは一瞬あたしを“貞子”と見間違ったんだそうだ。