綾乃≫≫≫嵐の夜





『――本州付近で停滞している活発な梅雨前線の影響で、北日本から九州南岸までの広い範囲で今夜遅くから明日の明け方までに大雨となるところが…』





――ザアアアアア…





「明日ちゃんと飛行機飛ぶのかなぁ」



もうかれこれ1時間ぐらいバケツをひっくり返したような雨が降り続いている。



激しい雨音でテレビの音もぜんぜん聞こえないから目一杯音量を上げているけど、それでもほとんど意味を為さなかったりする。



『――この雨の影響で各地では河川の増水や氾濫、土石流などの被害が相次いでおり…』



河川の増水や氾濫…



キャリーバッグに荷物をまとめ終えてテレビに釘づけになる。



映像はこの大雨によるものと思われる全国各地のひどい惨状を映し出していた。



そういえばウチの店がある場所って海抜が低いんだよね。



近くに大きな川もあって何年か前に氾濫したことがあったような…



「…お店大丈夫かな?」



ふと不安がよぎる。



――PM23:35



もう閉店業務を終えてみんな帰った頃かな…?



ちゃんと無事に帰れたかな…?



〜♪〜♪



心配していたらちょうど今日遅番の三沢さんから電話がかかってきた。



「もしもし」



『あ、店長?』



「うん、どうかした? 雨すごいでしょ? ちゃんと帰れた?」



『はい。でも三上川がすごかったですよ?』



三上川っていうのはウチの店の近くを流れている川のこと。



『濁流がすぐ橋の下まで迫ってて、上通るのにヒヤヒヤしましたよー』





―――…