慧吾≫≫≫挑戦状





「――ここがバス・トイレでこっちが今は使っていない部屋。ここを自由に使っていいから」



小さなキャリーバッグを抱え、遠慮がちに部屋に入る村瀬の背中に立つと、気配に驚いたのかビクリと肩を震わせた。



福嶋から電話で村瀬の様子がおかしかったから相談に乗ってあげてほしいと頼まれた。



ちょうど葛城さんの件で村瀬に電話しようと思っていたからそのついでに理由をたずねてみることにした。



最初はなかなか口を割らなかったけどどうにかなだめて口を割らせると、かなり差し迫った状況であることが分かった。





村瀬は、ストーカーの影に怯えていたのだ。







『いつから…?』



『今日…初めてあたし宛に変な電話がかかってきて』



『どんな電話?』



言い渋る村瀬からなんとか聞き出すと『昨日はどこに泊まったんだ?』みたいなことを言われたらしい。



明らかにつねに見張ってるみたいな口ぶりだな。



もしくは室内に盗聴器でも仕掛けているか。



どっちにしろ住居はとっくにバレていて、村瀬がストーカーの脅威にさらされているのは間違いなかった。