「げっ…」



ガタイがいいのにそれをいっさい隠そうとはしないノースリーブのキラッキラしたスパンコールのドレス。



際どいスリットからのぞく筋肉質な太腿とふくらはぎはとてもじゃないけど美脚とは程遠い。



顔はどうしたらこんなになるのかというほど絵の才能ゼロなドぎついメイク。



つんと鼻を刺すようなきつい香水が辺りの空気を瞬時に汚染した。



「あらぁ〜♪ は〜ちゃんじゃな〜い♪」



うわー寄るな寄るな寄るな寄るな!



地球環境を壊すな!



俺の嗅覚を壊すな!



「あら誰? このコ。まさかは〜ちゃんの彼女〜?」



「いえ――んぐっ…「そうです!」



村瀬が否定しかけたのをとっさに手で口を塞いで肯定した。



「やだぁ〜アタシという“女”がいながら二股ぁ〜? 信じらんなぁ〜い」



すりすりと硬い胸板をこすりつけてくる。



ゾワッと全身の毛穴という毛穴が開き毛という毛が逆立った。



ドコが“女”なんだよ、ドコが!!!!



「…いや二股も何も、サユリさんと俺は最初から何も関係ありませんから」



ある意味、村瀬のストーカーよりタチが悪いんだよな、この人。



引越しの挨拶をしにきたときに粗品を持ってきて、受け取る際にちょこっと手が触れ合っただけで俺に電撃的に恋したんだそうだ。



そっからは部屋の外で顔を合わせるたびにしつこく言い寄られて、そのせいでマジで最近引越しを考えるようになっていた。