ふと歩道橋の下の交差点に目をやった。



「あ…」



信号待ちをしている先頭の車が福嶋くんの車だ。



思わず身を乗り出して目を凝らして見る。



周囲のネオンに照らされ、明るい車内の運転席には、今日中番で出勤してきたままの恰好の福嶋くん。



そして助手席には――…7月に入ったせいかやたらと露出の激しい女の子。



2人は楽しげに会話をしている風で、ときどき女の子が福嶋くんの腕を叩いたりしている。



ドクン、と胸の奥が鈍く疼いた。





『…好きだよ。おまえを苛めんのが…』





…分かってる。





『…さっさと西崎さんにフラれてこいよ。



そしたら――俺が惚れてやるから』





…分かってるよ。





『冗談じゃねぇよ』





痛いほど分かってる。





『…さっさとフラれちまえ』





福嶋くんは単にあたしをからかってるだけ。面白がってるだけ。





なのにどうして――…





『おまえはおまえが本当に進みたかった道へ進め。



俺はおまえを縛りつけたりしない』





どうしてあたしは――…







『俺なら、もっと広い世界に飛び立つことができる翼を持ったおまえを…





翼を折って5年も縛りつけたままになんかしない――…』







こんなにも今…





無性に福嶋くんに会いたいの…?





福嶋くんに会いたくて会いたくてたまらないの――…?












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