どんなに浮気をされてもけっして責めない、じっと堪え続ける陽菜のいじらしい姿が急に愛おしく思えた。



今夜も自分以外のもとへ帰っていくかもしれない、そんなことを思いながら毎朝旦那を見送るんだろう。



それでも愛しているのに旦那は陽菜の深い想いに気づかない。



陽菜の心に開いた隙間はどんどんどんどん広がっていく。



完全に空洞と化したとき、陽菜はどうなってしまうんだろう?



陽菜は心を閉ざしてしまうんだろうか?



陽菜を救いたいけど何もしてやれない。



いっそ『旦那なんかやめて俺んとこ来いよ?』って言えたらどんなに楽だろう――?



旦那から奪い取りたいと思うほど、陽菜を本気で愛せたらどんなにいいだろう――?



どうして…体と心は別物なんだろう――?






『……………ぁ………っ……』






体はこんなにも…



陽菜を必要としているのに…



陽菜を求めてやまないのに…



陽菜を愛しているのに――…






『――――…陽……菜…っ……』






初めて…






陽菜の向こうに、優花を見ることはなかった――…。












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