「荒ちゃん、お疲れさま」


麻帆の口から優しい言葉が溢れ落ちる。


「3年間、お疲れさま」


3年間…俺は野球に身を捧げた。麻帆と野球以外には何も興味がなかった。


「今日は、感動の試合をありがとう。今日の試合は、あたしの心からずっと消えないよ」


「…負けたのに?」


「バーカ。荒ちゃんがカッコ良かったから」


「…んなこと言っても、まだ地元には帰れねーよ」


「大丈夫だよ。今日の荒ちゃんから充電させてもらったもんっ」


8月XX日、夏の熱い甲子園。

決勝は4−3で花龍は負けた。


それでも、忘れることはないだろう。おじいちゃんになっても、きっと俺の胸には刻まれ続けているだろう。


もちろん、隣には麻帆がいてさ。


俺は優しく包んでくれる麻帆を、優しく抱きしめ直した。やっぱり麻帆は小さくて、だけどやっぱり愛しくて。


そして、俺の甘酸っぱい夏の日は幕を閉じた。