「荒ちゃ…」


「本当は今日、優勝してから言うつもりだった。中途半端を卒業してから言うつもりだったのに…」


優勝出来なかった。

勝つことが出来なかった。


ダメだ。また目尻が熱くなってきた。


「荒ちゃん、泣いていいよ」


君はいつもそうやって優しい。だから甘えたくなるんだ。


「あたしも一緒に荒ちゃんの悔しさを味わうから、さ」


気づいたら泣いていた。麻帆の温かい腕に包まれて。麻帆も泣いていた。俺の痛みを少し奪って。


悔しかった。


せめて最後の夏くらい、笑って頂点に立ちたかった。


泣きたかった。


声をあげて甲子園中に『優勝は花龍だ!』と響かせたかった。先輩達やシゲさんの想いを夢の頂上へ連れていきたかった。