大好きな君にエールを






ネクストサークルで体の調整をする。だけど、審判の一言一言に耳が反応する。


「アウト!」


1アウトを示す『赤色』がバックスクリーンへ表示された。バッターがメット深くかぶりながら帰ってくる。


「悪い…荒嶋…」


「まだ2つも残ってる。…んな顔すんなよ。似合わねーって」


悔しがる仲間に、精一杯の笑顔で返した。だって終わり、とか思いたくない。まだ可能性はある。


アナウンスが俺の出番を伝える。花龍スタンドが盛り上がる。剣道着姿の…麻帆も視野に入った。


「プレイ!」


バットを持つ手に力を込める。だけど力みすぎて、初球は打てなかった。


「力抜け荒嶋ー!」

「ボールよく見ろーっ」


バッターボックスから出て、飛び交う声たちを払い除けるように、バットを一振りした。


力抜けって、抜けるわけないじゃん。ボールよく見ろって、速いから見れるわけないじゃん。