バックスクリーンを見る。ノーアウト2ストライク、3ボール。
永松が息を整える。俺はベンチから立ち上がって叫んだ。
「永松、かっ飛ばせぇ!かっ飛ばせ…勝ーっ!」
『勝』という言葉に反応した永松が、チラッとベンチを見て…小さく頷いた。
ピッチャーが大きく振りかぶって投げた。
カキン…
ホームランの高さではないが、ボールは無人の守備へ飛んでいく。センターが慌てて取り、永松が向かう2塁へ投げる。
「セーフ!」
わぁっとスタンドでは歓声が起こる。花龍ベンチにも希望の光が生まれた。
「荒嶋、ネクストサークルで準備しとけ」
監督が頬を緩ませながら俺に言った。隣にはキャプテンもいて、
「つなぐことを頼むぞ。…いや、楽しめよ荒嶋!」
と俺の背中を押してくれた。俺は力強く頷きネクストサークルへ向かった。


