バシッ
「ボール!」
永松にしては珍しい。ストライクの前にボールだ。永松が疲れてるように見えたが…気のせいか?…だけど、気のせいじゃなかった。
「フェア!」
ヒット許してしまった。ランナーが塁に出た。相手のスタンドが歓喜に溢れる。
『大丈夫だ』
心から永松を見つめた。それに気づいたように、永松は頷く。フェアくらい大丈夫。
きっと大丈夫と信じていれば、相手は打たないと信じていた。
もう、追加点なんて無いと思っていた。だけど…
カキン…
俺たちの願いを引き裂くように、ボールは青空へ駆けていった。どこまでいくのかと尋ねても止まらない。
「ヒットだ!」
1塁ランナーが全力でベースを回る。ボールはまだ芝生の中。花龍が焦る。俺も焦る。
そして、どれだけ叫んでも俺の手の中にはボールは来なかった。気づいた時には…ランナーがホームベースを踏んでいた。


