永松がニヤッと笑った。コイツの不敵な笑み、初めて見たかも。
「君たち、自分の守備につきなさい」
審判が怪訝そうな目で俺たちを見た。俺たちは目を合わせて頭を下げ、守備についた。
よかった。永松が降板しなくて。俺は永松の球しか取る気はなかったからさ。
「いくぞ、永松」
永松の不敵な笑みを思い出し、俺もマスクの中でニヤッと笑った。
バンッ
「ストライク!」
なんだよ、この気迫は。さっきまでの永松の球じゃねぇ。別人みたいだ。
わくわくする。ゾクゾクする。勝てる、勝てる、勝てる、と心が躍る。
「三振!バッターチェンジ!」
審判の声にホッと胸を撫で下ろした。今は2アウト。あと1アウトでチェンジだ。
あと1アウト。取って俺たちに回すぞ。


