スコーンと飛んでいったボール。俺の中に生まれたやる気を全部持って行かれたみたいだった。
「おぉっ、ホームランだっ!」
後ろの方から、観客が叫ぶ声が聞こえた。と同時にボールがスタンドに入ったのか、歓声が湧き上がった。
…嘘だろ。
自分のサインを信じていた。永松は打たれまいと確信していた。だけど…打たれた。
するとチラッとスタンドの麻帆の剣道着姿が目に入り、慌てて永松の元へ駆け寄った。
「悪い」
永松が帽子を深くかぶりながら、地面に吐き出した言葉。謝るなんて、らしくない。
「お前に偉そうなこと言っておきながら簡単にホームラン打たれて…情けねーな」
「永松…」
「打たれたくないっていう気持ちが大きすぎて、逆にミスった」
高2の時に初めて知った、永松の弱さ。あの時に弱っていた永松が今の永松と同じに見える。
「なぁ荒嶋…逃げ出したいって言ったら怒るか?」


