カッコ悪い姿見せるかもしんねーけど、最後までキャッチャーをやり通したい。
「荒嶋がそう言うなら止めない」
監督がいつもと変わらない厳しい顔をしながらくれた言葉だった。永松は「逃げるなよ」と叩いた。
…逃げないさ。
大好きな野球があって、大好きな仲間がいて、大好きな君がいるんだから。
「よし、チェンジだぞ!」
グローブや帽子を片手にベンチを去っていく仲間達。俺も土が付きまくったユニフォームを少し払って、監督の元から立ち去った。
8回表が始まる。相変わらず2−1のまま。この回は決して取られてはならない。
打者がバッターボックスに立つ。打つなよ、そう念じながら永松にサインを出した。
「ストライク!」
永松、お前の球ってずっと生きてるよ。本当に見入っちゃうくらいなんだ。
そして、第2球目。永松が大きく振りかぶって投げた。


