「…わかってます」
否定されなかったことは嬉しかった。だけど心の中は不安だらけだった。
ミスをして何点も取られて、花龍を負けへ導いてしまったらどうしよう。
それに麻帆だって見に来ているのに、情けない姿は見せられない。これ以上嫌われたくないんだ。
「何ヘンテコな顔してんだお前」
永松が無表情で見てきた。ヘンテコって失礼な。永松にはわからないかもしれないけど、俺は今…悩んでるんだぞ。
「そんなに不安なら垣田とか他の奴と代われ。花龍のキャッチャーはお前だけじゃないんだぞ」
永松の冷たい視線が俺の胸に突き刺さった。垣田がチラッとこちらを見て、甲子園で戦いたいという目をしていた。
だけど…
「…嫌…だ」
「あ?」
「永松、俺…嫌だ。他の奴には悪いけどキャッチャーの座、譲りたくない」


