──side*康也──
「チェンジ!」
7回表が終わった。点差は相変わらず2−1で、この回の攻撃は花龍だ。
「永松、荒嶋」
ふと、監督に呼ばれてベンチから腰を上げた。
「2人共、体力の方は大丈夫か?交代も近いかと思うが…」
「いえ、大丈夫です!」
「まだいけます」
永松と顔を見合わせてニッと笑った。ここで引き下がるわけにはいかないんだ。
「…そうか。だが荒嶋…」
監督が顔をしかめて俺を見た。永松は何かピンときている様子だった。
「お前の左手、大丈夫なんだろうな?」
ギクッとした。まさか見抜かれていたなんて。
「気づくに決まってるだろ。さっきの回でミスした時に痛めた、違うか?」
「は…はい」
「ったく、バカなことするんじゃないぞ。試合中にあの茂山みたいになられちゃ困るからな」
監督は俺を試合に立たせてくれることを拒まなかった。否定しなかった。


