本当は…見てほしい。
スタンドから生の麻帆のエールを送ってほしい。
だけど…俺はそういうことを言える立場じゃない。あんなことを言っちゃったんだから。
「麻帆ちゃん見に来ないのかー。残念だな、康也」
俺は永松を見た。だけど永松も同じように俺を見ている。
「…今、俺のことを康也って言ったか?」
「俺は荒嶋としか呼ばないけど?てか麻帆ちゃんとも言わないし」
じゃあ誰だよ?今、俺と永松に聞こえた声は何だ?不思議に思い、寝っ転がったまま頭を動かすと…
「やっと見つけたぞ、野球バカ2人組」
俺の視界には、逆さまになったシゲさんが映っていた。
「………えっ?」
俺は慌てて飛び起きた。同じく永松も。
「な…なんでシ、シゲさんが!?」
「野球バカ共を確保しに来たんだよっ。ったく明日は決勝だってのによー」
そう言い、シゲさんは俺と永松の間に腰を下ろした。


