俺のユニホームからは、さっきまでいた甲子園の土のニオイ。シゲさん…伝わっていますか?甲子園の土のニオイ。


シゲさん、俺…シゲさんと一緒に感じかった。あの空の青さを、駆け出したくなる土の感触を。


────…


「康也くん、電話…代わる?」


さっきより落ち着いた俺に、実貴さんが言った。確かに実貴さんは今、電話をしていた。でも…電話?てゆうか誰に?


「君の愛しの彼女ちゃん」


俺は一礼して、差し出されたケータイを受け取り耳にあてた。


「…もしも…」


「荒ちゃん、お疲れっ!」


俺を元気づけてくれるためになのか、わざとらしいテンション。バレバレだっつーの。


「ずっと見てたよ。何回もホームベースに来たランナーと戦ってさぁっ。さらに…ホームランまでかっ飛ばして!!」


「…全然格好良くなかったぞ。ミスも何回もしたし、ホームランだって第1号は永松だったし…それに勝てなかった…ごめん」