「お前カッコよかったぞ。きっと麻帆ちゃんも惚れ直したなっ」


ポロ…俺の目から透明な粒が溢れだした。それを合図にシゲさんの大きな体に飛びついた。シゲさんは大きな腕で俺を包んでくれた。


「シ、シゲさん…」


「ごめんな、急にキャッチャー任せて。こんなにマメだらけで…。2週間でキャッチャーになるの…辛かったろ?」


俺は横に首を振った。


「シ…ゲさんは悪くないです。俺こそ負け…ちゃっ…」


「勝ち負けなんかもう、どうでもいい。お前が9回まで花龍を守ってくれただけで十分だ」


「すみませ…ん。ほんと…に、す…みませんでしたっ。本当に…」


俺を力強く包んでくれるシゲさんの腕は心地よかった。だけど、微かに震えていたシゲさん。




「でも…やっぱり俺も出たかったなぁ…高校最後の甲子園。大好きなお前らと一緒に戦いたかった」




そう言って、シゲさんは泣いていた。ひしひしと伝わってくる、シゲさんの痛み。