「セーフ!」


2−0、荒ちゃんのミスから繋がってしまった点数が加算された。あたしの願いは儚く消えてしまった。


バックスクリーンの相手の点数に記された『2』を見つめ、立ち尽くす荒ちゃん。


ねぇ荒ちゃん、あたし今すぐに荒ちゃんを抱きしめてやりたいよ。


大丈夫だよって。荒ちゃんなら次からは抑えられるよって。


だけど、テレビ越しの甲子園にいる荒ちゃんには届かない。テレビを貫くことも出来ない。


荒ちゃんの傍に行けたら…瞬間移動が出来たら…なんて叶わない夢しか思い描けない。


「麻帆…」


お姉ちゃんが優しくあたしの頭を撫でてくれた。あたしはこらえていた涙が溢れでてしまった。


荒ちゃんの傍にいられない寂しさが押し寄せてくる。



荒ちゃん…荒ちゃん、荒ちゃん。



今、荒ちゃんが苦しんでると思うと胸が痛いよ…。