自然と動いていたあたしに、あたふたする荒ちゃん。
「顔…見ないから泣いていいよ」
本当は荒ちゃんの泣いている顔を見たい、盗み見したいと思った。だって一度も見たことがなかったから。
だけどね、素直に泣きだした荒ちゃんを目の前にしたら、盗み見することなんて忘れたよ。
見た目はあたしよりも大きな荒ちゃん。がっちりしていて、あたしもすっぽりハマっちゃう腕を持っている。
だけど、大きいからこそ小さな心の痛みまでは行き届かないのかもしれない。
だからあたしは荒ちゃんの心を…ううん、『荒嶋康也』自体を包み込むよ。
荒ちゃんより小さなあたしは、荒ちゃんみたいに大きな腕は無いけれど、荒ちゃんの心に近い場所にいるよ。
何もかも小さなあたしだけど、泣いている荒ちゃんを包み込むことはできるよ。


