あたしは実貴さんの肩を撫でてやることしか出来なかった。好きな人が入院しているなんて聞かされたら、どんな気持ちだろう。
ねぇ実貴さん、さっき遠距離は切ないって言って泣いてたけど、本当は好きな人に会うのが切なかったんじゃないですか?
だから、わざと遠距離は切ない…を口実にして泣いたんじゃないですか?
「あーダメダメっ。あたしまだ泣かないからね、麻帆ちゃん」
必死に頑張る実貴さんを見て、あたしはふふっと笑った。
────…
そして、あたし達は1つの病室の前に着いた。
コンコンッ
実貴さんが震える手でドアをノックした。
「はい」
中から聞こえた男の人の声。実貴さんの心臓が、飛び跳ねた反応をしたからきっと、好きな人だ。
実貴さんはあたしの顔を見て、ドアを開けた。


