実貴さんがあたしの手を引き、その建物の中へ。その建物の中に入った瞬間に感じた独特のニオイ。
「ちょっと待っててね、麻帆ちゃんっ」
とあたしに鞄を預けて受付へ向かった実貴さん。そう、あたしが来た場所は…病院だった。
最初は実貴さんが眼科に来たのかと思ったけど、実貴さんは誰かの名前を聞いていた。
「行こっかっ」
あたしが周りを見渡していると、実貴さんが戻ってきた。
「エレベーターで行く?それとも若者らしく階段で行く?」
あたしは迷わず最初の乗り物を指した。『さすが麻帆ちゃんっ』と笑い、あたし達はエレベーターに乗り込んだ。
────…
「入院してるの、あたしの好きな人」
ポツリと呟いた実貴さんの目は穏やかだった。
「無理しすぎて、倒れちゃったんだって。本当…バカだよね」
「実貴さん…」


