「なぁ永松…」


「何?」


永松の顔を見た。…俺は永松が無表情と言ったのを反省した。永松も悔しそうな表情をしていた。


「…な、何でも…ない」


「あっそ」


俺との会話が終わると、永松は再び外を見た。永松は外を眺めたくて眺めていたんじゃない。悲しさをどこにぶつければいいかわからないんだ。


学校に帰り着くまで無言だった。話すことも浮かばなかったんだ。


「集合!」


学校に着き、バスから荷物を出し終わると副キャプテンがみんなに号令をかけた。


「今日はお疲れさま。とてもいい試合だったと思う。甲子園出場を決めたが浮かれないようにな。それじゃ、解散」


シゲさんのことには一切触れなかった副キャプテン。きっと口に出せなかったんだ。感情が溢れ出してしまうから。