「それとさ…」
と、シゲさんが頭を掻きながら目を泳がせる。
「…甲子園出場決めたら、好きな奴に気持ち伝えるよ」
俺は目を輝かせた。シゲさんには想い人がいて、中学から片想いをしていたから。
「ま、康也に負けてらんねーし」
さっきまでの野球モードから切り替わったシゲさん。俺も負けじと言い返した。それから軽くキャッチボールをした。
────…そして俺達は様々な気持ちを胸に抱き、決勝の日を迎えた。
「今日はいよいよ決勝だ。絶対に気を抜くな!1人でも気を抜いたらわかるな?」
にやっと笑う監督が俺達に緊張を味わせた。
スタンドから吹奏楽部の演奏と応援団のハーモニーが聞こえる。決勝が始まることを知らせた。


