「俺だって……帰りたくねぇよ。麻帆から離れたくねぇ」
『あたしも……』と、俺の腕の中で何度も呟く麻帆の声が聞こえた。
「だけど……行かなくちゃね。荒ちゃんは花龍に帰らなきゃ。だって、花龍のキャッチャーになるんだもんね!」
そう言って、ニコッと笑いながら俺を見上げた麻帆。
「お、おぅ」
ぎこちなくなった俺の返事を麻帆は笑った。
いつまでもこうしていたい。麻帆といつまでもじゃれていたい。
そう思っていた時、俺はあることを思い出した。……やっべ、忘れるとこだった。
「あのさ、麻……」
「荒ちゃん、今日は記念日……おめでとうっ」
だが……先を越されてしまったみたい。


