なかなか手を握って立ち上がろうとしない私に、先輩の方がしゃがみこんで、頭をなでてくれた。



正直、怒っている先輩は怖かった。



でも、先輩が怒ってくれなかったら、男子たちは更に調子に乗っていただろう。



とにかく、私は先輩にお礼を言った。



だけど優しさと怖さを兼ね備えている先輩の本性がどっちなのか、私にはわからなくなる。



優しい先輩が本当の顔なんじゃないのかなって、期待してしまう。



でも、喧嘩の強さを目の当たりにしてしまったら、その期待もあっという間にしぼんでいっていく。



そして、その騒動の数時間後、遅刻したナナミが何食わぬ顔をして教室に入ってきたのだった――。