「河山です! 今、メイン何カメですか!?」


『三カメ!』


「わたしも今、家で見てます! 救急車は呼びましたか!?」


『呼びに行かせてる!』

「彼女、喘息です! 手の空いてる人に、客席から薬持ってる人探してもらってください!」


『解った!』


「あと、誰か三人ぐらいで彼女の楽屋に、薬探しに行かせてください!」


『解った! あとは!?』


「事務所が同じ出演者か、彼女のマネージャーの電番知ってる裏方さんがいたら、連絡を取ってもらって、その人が薬持ってないか確認してください!」


『香織ちゃんのジャーマネに薬持ってねえか聞きゃいんだな!? 解った! 他は!?』


ここでわたしは、初めて彼女のファーストネームが【カオリ】であることを知ったのだ。


「三カメ前から人はかせてください! 様子が解りません!」


窒息死は汚く醜い。
涎と排泄物をほぼ確実に垂れ流し、場合によっては泡まで吹いてしまう。


薬が間に合わなければ、香織さんがそうなる様を逐一お茶の間に晒すことになってしまうが、様子を掴めずに指示が遅れるよりはマシだ。