Cherryblossoms...05




黒く黒く広がる心の闇。

汚く渦巻くそれに、俺は侵食されるのを待った。

その間に募る激しい怒気。



目の前に広がる俺の心と同じ闇を見つめ、深呼吸する。

有言実行、決めたら即行動の俺は佐倉の家に転がり込んだその夜、廃棄された工場の跡地に立っていた。


だが、ただの獅堂秋羽としてじゃねえ。



俺はここにコスモスのトップとしている。


誰でもない、コスモスのトップとしてケジメを付けるために此処にいる。



心臓の音がゆっくりとゆっくりと全身を包み込み、まるで自分がもう一人の自分を見ている感覚になる。


沈黙を守っていた世界に、コツンと、ひとつの足音がする。

闇の中に眼光を向けその人物が誰かを確認する。



「……コスモスの獅子が俺に用事なんて珍しいね」

「黙れ、番犬」



月明かりが照らし出すその顔、ひょろっとした背に赤茶の髪。

幾度も幾度も顔を見合わせ、拳を合わせ、血反吐を吐きあった男。

ケルベロスの総長、別名番犬(名前は知らねぇ)。


俺はその男を睨みつける。

いつもと変わらないヘラヘラとした笑みを口元に浮かべているが、瞳は警戒するように俺を捉える。