「失礼します。」


美術準備室のドアを開けると、絵の具の匂いがほのかに香る。


「ああ、村上先生。」


デッサン中の戸川先生が、手を止めて俺を見た。


「これ返しに来た。スゲー面白かった。犯人が最後までよめなかったし、中盤でのどんでん返しにはマヂ驚いた。」


「だろ?あ、そこの机の上に置いといてよ。」


「はいよ。」


机の上に本を置いて、デッサン途中の絵を見た。


「これ…奥さん?」

ふんわりと微笑む、女性がいた。


その絵は優しくて、温かくて…愛を感じた。