「あのね~イブ。
助けてやったのに、まだ泣くの??」








屋上の扉を開けて。

俺は保健室を目指していた。







イブはこんな状態のまま教室には戻りたくないだろうし。

落ち着くまで少しゆっくりする時間が必要かな…?と思ったから。








カッコよくお姫様だっこのまま階段を降りようとは思ったけど…。


残念なことに俺の腕力はもたず。







仕方がないからイブをゆっくり降ろし、俺はアイツの左手をギュッと握る。




手を繋いだのなんて何年ぶりかわからないけど。
アイツの小さくて柔らかい手のひらは、なぜかとても気持ちよかった。








「…うっ、…ひっ…。」











…に、してもだ。






コイツ、泣きすぎだろう。








「イブ。いい加減泣きやめよ。」


「…っ…。だって…っ。」







あ~。
ホントにめんどくさい!!








『いい加減にしろよな!!』








と叫ぼうとした時。

イブは涙を浮かべながらこう言った。









「う、うれしかったの。
慎ちゃんが私を…“好き”って言ってくれたことが…。」










そして俺の腰を正面からギュッと抱きしめると。









「あ、あのね。
私も好きだよ、慎ちゃん。
ぶ、不器用だけど優しくて…心のキレイな慎ちゃんが…大好きだよ。」








と。

俺を好きだと言って。



イブはワンワン泣いていた。