「桐谷慎、いろいろありがとう。」
“羽田に行く”と。
高宮が俺に告げ。
豪華すぎる朝食の後片付けを全て終えた時。
高宮が俺の目をじっと見て。
少しすまなさそうな顔をしながらそう呟いた。
「……うん。」
寂しくないかと言われれば嘘になる。
目の前にいるコイツを欲しくないのかと言われれば、答えはNOだ。
俺の知略をもってすれば、藤堂をとことんまで追い込んで高宮を奪うことなんて簡単だ。
だけど…
それじゃ意味がない。
「応援はしないけど…。
高宮は高宮が望む道を行けばいい。」
きれいでいたいと願うのに、出口の見えない恋に迷い込んだ高宮。
本当の高宮はそのクールな風貌とは裏腹に、ガキくさくて純粋なただの25才の女の子。
だけど…ね?高宮。
ドロだらけになりながら何度も立ち上がり、答えを見つけようとするキミに俺は恋をした。
最初はイブとそっくりなキミに興味を持った。
だけど今はそうじゃない。
もちろん君を見るたび、イブを思い出して。
君とイブを重ねてしまう時もあるけれど。
ちゃんと好きなんだ。
ちゃんとキミのことが好きなんだよ、高宮。
イブが死んで。
一緒に死んだハズの俺の心。
その心を再び揺り動かして。
生き返らせたのは他ならぬキミだから。
だから、最後は願うよ。
「高宮。
俺はお前が生きてくれてて。好きなやつの隣で幸せになってくれればそれでいい。」
キミの幸せを心から。