桐谷慎の口調でわかる。




きっと…彼が“イブ”と呼ぶ、写真の中のあの子は。

桐谷慎にとってトクベツなんだ。








もちろん、元カノで幼なじみ…ってだけでも充分トクベツなんだけど…。








そういう薄っぺらな繋がりだけじゃなくて。







桐谷慎という人間を構築する上で“イブ”という女の子との出会いはトクベツだったんじゃないかな。






彼を過去に縛りつけ、彼の心までも奪った彼女。







興味はある。

桐谷慎という男を虜にして離さない、イブという女の子に。








だけど








「高宮は奪いたくなる。
心も体もお前を形作る全てのモノを自分のモノにしたくなる。

…なんなんだろうな、この感情の差は。」






…なんて

桐谷慎が私を好きだと笑うから。

私はお腹の奥がキュンと痛くなる。







「そんなの、理由なんてわかりきってるじゃない。」









そんな甘いウズキを必死に押さえて。
できる限り高飛車に桐谷慎を見下ろして。








「桐谷慎が。
イブより私にホレてるからに決まってるじゃない。」







と。

アイツの腕をグイッと引き寄せて思いっきり抱きしめる。





大丈夫。

あなたはちゃんと前に進める。





だから…







早く、過去から抜け出して…!!!!











そんな想いを込めてアイツをギュッと強くだきしめると、桐谷慎は“ギョッ”とした顔をして一瞬体をこわばらせた。