「高宮。」

「…??」

「お前は自分が俺と藤堂を天秤にかけてる悪いオンナだと思ってる?」






小さな茶色いアルバムを大切そうに持ちながら。
桐谷慎は私に問いかける。






私が悪女か聖女か??



そんなの答えは決まってる。








「桐谷慎。」

「…ん?」

「NOって答えは…ありえないでしょ。」






2人の男を好きだなんて不倫理にもほどがある。

私を聖女だという人がいるのならここに連れてきて欲しいよ。









箸を止めて。
うつむき加減に答えると



「…どうして?」




いつもよりも真面目で誠実な目で。
桐谷慎は私に問いかける。







「私…。
桐谷慎が欲しいくせに、しゅーちゃんの手も放せないんだよ?」


「……。」






昨日だってそうだ。

あのまま流れに身を任せていればよかったのに最後の最後でしゅーちゃんを裏切れなかった。




なのに…

こうして桐谷慎と向かい合って話が出来ていること。

こんな私を彼が好きだと言ってくれることを嬉しいと思ってる。










「…ッ。
こんなの…どうかしてるとしか思えないでしょ。」







半ばヤケになりながら無理して笑って。
暗い雰囲気がイヤでおどけて答えると。





ギュッ…






桐谷慎は何も言わずにテーブルに置いてあった私の右手を優しく包みこむように握ってくれた。







…えっ…?






手の甲に感じるあたたかい手のひらのぬくもり。




いつも強引な彼には似合わない、この行動。




驚いてフッと桐谷慎の顔を見ると。
桐谷慎はとても優しい顔をして私の目を見つめていた。