ヒィヒィ言いながら爆笑する桐谷慎を目の前に。
私はイラつき度MAXをむかえていた。





ムゥゥゥ……。






「ちょっと!!笑いすぎでしょっ!!」


「だって、あの挙動不審な顔~!!
あ、ヤバい。思い出したら笑いがでる!!……ブハッ!!」




ひ、酷い!!





「だって……!!」




と次の言葉を繋げようとした瞬間。







「いいでしょ?
俺だって昨日は、一応、傷ついたんだからさ。これくらいの仕返しなんてカワイイもんでしょ。」






と、桐谷慎がニィっと笑う。





その顔はいつもの悪魔な笑顔とも天使の笑顔とも違って。

イタズラが成功した時の子どものような、無邪気な顔して笑うから。









思わず胸がキュンとして、その笑顔から目が離せなくなった。



無意識のうちにボーッと桐谷慎の顔を見ていると。

一瞬、素の表情をした彼と視線が触れあった。








「なに。見とれちゃった??」

「ばっ…!!そんなワケないでしょ!?」








半ばヤケになりながらスズキのポワレを口に放りこむと。









「…うん。
わかってるよ。
そうじゃないってコトくらい。」










と、寂しそうに呟く。









えっ……??







予想外の桐谷慎の反応に戸惑いながら。
彼の視線から何かを読み取りたいと願うけど。




彼の目は何も教えてはくれない。









そんな時間がどれくらい過ぎただろう。




桐谷慎はフゥとため息をついて立ち上がり、リビングにある本棚から1冊のアルバムを取り出した。