だけど………。





桐谷慎と1つになった瞬間。





生まれたのは快感でも幸福感でもなく





――罪悪感






しゅ~ちゃんという大切な人がいながらこんな行為をしている自分への嫌悪感。









『伊織~!!』





頭の中でしゅーちゃんの顔がよぎる。





『好きだよ、伊織。
すげぇ好き。』





もう…戻れないんだと思った。


お日さまみたいな笑顔で私を呼ぶ、優しくて強いあの人の胸の中には…。


もう戻れないんだと。







今度こそ私としゅーちゃんは違う人生を歩むんだと思ったら…、泣けてきた。






「うっ…ふぅっ……」






溢れてきた感情を堪えきれずに私の視界は涙で歪んで。

目の前にいる桐谷慎の顔すら見えなくなった。








「高宮。」

「……。」

「どうして泣くの?」

「……。」







桐谷慎はそんな私を見て腰の動きをグッと止める。







きっと…
カンのいい桐谷慎のこと。

泣いてる原因なんて全てお見通しで、今からいつものように私をからかう。

そして“止めてあげないから”とか言ってこの行為を続けるんだろう。







そう思っていたのに。









「高宮は…残酷だね。」









そう言って。

桐谷慎は酷く傷ついた顔をした。








桐谷…慎……。







彼は私の中から自身を取り出して、しばらくうつむいたまま頭を抱え込む。




何も言わない、語らない無言の時間がずっと過ぎると。

突然近くにあったボクサーパンツとジャージだけを穿いて桐谷慎はベッドから立ち上がった。




そして…ドアノブに手をかけて何かを呟くと。





「今日のコトは忘れろ、高宮。」




泣きそうな顔をして。

桐谷慎は寝室から出て行った。