「桐谷慎…!!」




気がつくと私は彼の首筋に両腕を伸ばして。
自分の方に引き寄せて彼を強く抱きしめていた。





私はずっとこんなに深い愛に見守られていたの?







“愛してるよ、高宮”

“好きだよ、高宮”








いつも冗談を言ってるみたいに軽く言うから、本気にしたことなんてなかった。




しゅーちゃんがいるから、よそ見しちゃいけないと思ってたし、桐谷慎みたいな遊び人の言うことなんて素直に聞いたらバカを見ると思ってた。







「好きだよ、高宮」








この言葉の裏には桐谷慎の大きな愛があったなんて、お子ちゃまな私は気づきもしなかったんだよ。









桐谷慎。

あのね。
私は気づかないフリしてた。
心に鍵をかけて見ないフリをしてた。



だけど…
だけどね?








きっと

ずっと

私はその言葉を嬉しいと思ってた。








だけど…
しゅーちゃんが好きなクセにそんな気持ちを持つ自分が汚く思えて。

自分で自分の気持ちにフタをして暗示をかけてたんだと思う。







“桐谷慎は天敵”

“桐谷慎はエロ魔神”

“桐谷慎なんて大っ嫌い!!”








そう自分に暗示をかけなければ、アンタに気持ちが傾きそうな自分が怖かったの。








桐谷慎。

今なら言える気がする。







私はフゥーと大きく深呼吸をすると。








「私もアンタが好きだよ、桐谷慎。」







勇気を振り絞ってホントの気持ちをアイツに告げた。