言われた瞬間。

涙が溢れた。





バカ。
桐谷慎はバカだよ。




この人はバカでワガママでサイテーで。

なんて大きくて優しい人なんだろう。






“強引に奪われた”そう私に思い込ませるコトで。

“合意の上じゃない”という状況を作ることで。








私の逃げ道を作っていてくれている。

私の心を守ろうとしてくれている。







桐谷慎。

アンタはバカだよ。

私はアンタと違う他の男を忘れる為に、あんたを利用しようとしてる、ヒドイ女なんだよ?








しゅーちゃんとは違う。

不器用で見えにくい。

だけどきちんとそこにある貴方の愛に気づいて私の胸が痛くなる。







「なに泣いてんの。」

「だって…。」






ボロボロ涙をこぼしながら。
桐谷慎に押さえつけられた私を見て、彼は呆れたように笑う。







「高宮はこれから俺に襲われちゃうんだから。
そんな顔してちゃダメでしょ??」







ねぇ、桐谷慎。

あなたはいつもそうやって私を守ってくれるね。

ドSに私を追い込んでも最後の最後は私の望みを叶えようとしてくれる。




わかりにくいけど。
あなたはとても優しい人。

優しくて哀しい目を持った人。







「ねぇ、桐谷慎。」

「なに??」

「もう…逃げないからこの手を放して??」






だから…ね。

貴方だけが私の荷物を背負わなくていいよ。

一緒に堕ちよう??

この出口のない恋に。








「あなたが欲しい。」










気づけば私は胸の奥に封印していた一言を素直に彼に伝えていた。