「桐谷慎…っ。」




最後の望みをかけて。
涙目になりながらヤメテと訴えても桐谷慎の表情はピクリとも動かない。




彼が掴んでいる手首から私の震えは伝わっているはずなのに、掴む力は弱くなるどころか強くなるばかり。








正直、桐谷慎のコトは…気になってる人、なんだと思う。







嫌いだと。

無関心だと言えばうそになる。





欲しいか、欲しくないかといえば、手に入れたい男…だと思う。






だけど…

こんな無理やり奪われるのはやっぱりイヤだ。






気になってる人だから。

好きになりたいと思ってる人だから。





桐谷慎はトクベツだから。

こんな繋がり方がイヤなんだ。









「ヤダ…っ…。」






拒絶の言葉を口にした瞬間、ツゥッと一筋涙がこぼれた。





桐谷慎は表情を変えないまま私のまぶたにキスをすると






「大丈夫。悪いのは全部俺だから。
高宮は嫌がったのに俺が無理やり襲ったんだ。」





そう言って。
桐谷慎は私の頬に優しくキスをした。




「悪いのは全部俺。
お前の罪悪感も背徳感も全部俺が引き受けるから…。

今は俺に溺れろ。

一瞬忘れさせてあげるよ、藤堂を。」




そう言って。
桐谷慎は優しくとろけそうな目をして。

私の唇に触れるだけのキスをした。