お前が嫌いだと。

別れようと言うよりも。

これ以上ない残酷な言葉でしゅーちゃんは愛を囁く。







その言葉は高級なシャンパンのように甘くて魅惑的な香り。


シュワっと爽やかに私の耳をくすぐる。








だけど…。

勇気はない。

この手を取る勇気はまだない。









返事に躊躇して。







何も言えずにうつむいていると、しゅーちゃんは優しく笑ってこう言った。






「今すぐじゃなくていい。返事はゆっくりでかまわないから。」



「……。」



「ゆっくり考えて?伊織の人生だから。
俺は無理強いはしたくない。

だけど…。
俺を選んでくれるっていうなら世界中が伊織の敵になっても俺が伊織を守るから。

どんなに後ろ指さされても伊織のコトが好きだって言うから。」







そう言って。

しゅーちゃんは私の目の前にスッと白い封筒を差し出した。






なに…、これ……。










不思議に思って中身を開くと…

中に入っていたのは沖縄行きの航空チケット。







「伊織が俺を選んでくれるなら…、この時間に羽田に来て?
俺…、待ってるから。」









そう言ってにっこり笑うと。








「祐吾!!!サンキュー!!!」








伝票を持ったまま。

祐吾さんにバイバイをするとキャッシャーの方へと、しゅーちゃんは消えて行った。