「ホントに伊織ちゃんのコトが好きなら相手のために身を引く選択だってあるはずなんだ。」





そう言って。

今日何本目になるかわからないタバコに祐吾さんは火を灯す。






フゥ~と気だるそうに白い煙を吐くと。






「秀人。
お前の想像以上にお前の取る行動や選択が、伊織ちゃんの人生を振り回してることを忘れるな。」








そう言って。

祐吾さんはカウンターの奥へと消えていく。









「好きだから。
好きだからこそ離れる愛もある。」









祐吾さんのいなくなった後に残るのは、少しこぼれたビールに、淡いタバコの匂い。


BGMに流れている耳に残るJAZZの音。







それに…。



私としゅーちゃんの心にズシリと重くのしかかる真実。







“愛人”








私としゅーちゃんの恋愛はきっと苦しみの無限ループなんだ。







微かに残る思考の中で。

そんな風に思った。