「それに…。」

「…??」






口ごもる桐谷慎に驚いてフッと顔を見ると。

絡み合う視線と視線。







「卑怯なのは俺も同じだからな。」








桐谷慎は自嘲気味に笑うと。

なんだか意味深な発言。









卑怯者??

よく話がわからない。










それだけ言うと桐谷慎は一言も発することもなく、淡々と運転を繋げていく。






あんなに喋っていたのに車内は一瞬にして無言になる。







しゅーちゃんといると無言の時間が怖い。

無言の時間が怖くて、何かと話をする私なのに…。

桐谷慎とはイヤじゃない。






無言でも焦らないし怖くない。

“好き”の度合いが違うから??







いろいろ考えるけど、答えはよくわからない。






ただ…

桐谷慎といると凄く楽だ。






最初から好かれようと思って接してた訳じゃないから変な気も使わなくて済むし。

ありのままの自分でいられる。








窓の外に流れる景色を見つめながら。

桐谷慎と無言の時間を共有していると、よく見慣れた代官山の風景が顔をだす。




私たちのお城。

アリストコートの目の前で桐谷慎は車を止める。





「ありがとうございました。」





そう言って。

扉を開けて外へ出ようとするとギュッと右手を掴まれた。